1矯正治療の基本的なメカニズム
まず、矯正治療の基本的なメカニズムを見てみましょう。
人間の歯には、歯槽骨という歯根を支える骨と、歯根本体と歯槽骨をつなぐ歯槽膜という繊維状の膜があります。いずれも正常な歯を維持するために必要な要素ですが、力が加わると次のようなことが起こります。
歯根膜は、力が加わった方向に伸縮する。
歯根膜の厚みを正常化するために反応するのです。
歯槽骨の代謝(再生・破壊)により、歯が動きます。
つまり、歯列矯正をすることで歯根膜に小さな力が加わると、骨を新陳代謝させる細胞が少しずつ歯を動かしていくことができるのです。この仕組みにより、矯正治療による「美しい歯並び」と「噛み合わせの改善」が可能になります。
2矯正治療期間の目安
矯正治療期間の目安
矯正治療の期間は、歯を移動させる距離と現在の歯の状態によって異なります。
矯正治療期間の目安
矯正治療の期間の目安は、部分矯正で6~10か月、全体矯正で2-3年半程度です。
実際の治療期間は、歯をどの程度動かす必要があるかによって異なります。距離が短いほど早く、距離が長いほど長く治療ができます。
また、矯正治療の期間は、年齢や現在の歯の状態に大きく関係することを忘れてはいけません。
虫歯や歯周病がある場合は、歯列矯正をする前に治療が必要です。逆に言えば、定期検診で歯並びを維持し、比較的歯並びが良い人は、数か月で矯正治療が完了することもあるのです。
3歯列矯正はなぜ時間がかかるのですか?
矯正治療は、短期間で完了する治療ではありません。前述したように、完成までに何年もかかる。なぜそんなに時間がかかるのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
歯列矯正の装着に時間がかかるのは?
矯正治療はただ、歯並びのガタガタを治すのではなく、患者さんにとって適切な位置に歯を移動させるからです。たとえば、一見きれいに並んでいても、すべての歯が理想的な位置より前方にずれていたら、多くの本数の歯を後方に移動させることになり、移動距離が長くなってしまいます。
もう一つの理由は、歯を動かすための「矯正期間」と、動かした後の歯を固定するために必要な「保定期間」の2つがあるからです。
歯列矯正で歯を動かすことに成功しても、そのままにしておくと必ず「後戻り」の原因になります。これは、歯を元の状態に戻そうとする力が、歯を動かそうと頑張るからです。
この作用を防ぐために、リテーナーと呼ばれる装置で歯を固定して保定する必要があります。この期間も含めると、歯列矯正の装着には長い時間、何年もかかるのです。
矯正治療は、時間はかかっても、適切に治療することで、顔の印象を変えることができます。
人によっては、適切な歯列矯正によって歯を正しい位置に戻すことで、顔の輪郭を整えたりすることができます。もちろん、得られる変化には個人差がありますが、人によっては「小顔になった」と感じることもあるようです。
長い間放置しておくと、気づかないうちに表情筋が歪んでしまうことがあります。矯正治療によって噛み合わせが改善されれば、筋肉の歪みも徐々に改善され、場合によっては「輪郭が良くなった」「左右のバランスが良くなった」など、嬉しい変化を実感できるかもしれません。