歯を抜く矯正治療のルーツ
- 矯正治療の歴史は古く、旧約聖書の「ソロモンの雅歌」にもその記述が見られます。
- ああなんじ美わしきかな、なんじの歯は毛を剪りたる牝羊の浴場より出たるが如し云々
現在の矯正装置の原型が誕生したのは1900年代初頭(明治後期)。エドワード・アングル先生(Edward H. Angle) が矯正装置を開発し、矯正学という分野を確立しました。
当時、「矯正の神様」と呼ばれていたアングル先生は「神から与えられた歯を抜くのは冒涜である」と考え、すべての患者に非抜歯での矯正治療を行っていました。
しかし、全ての患者さんの歯を抜かないで治療していたアングル先生の症例に、多くの後戻りが見られました。
そこで、カルビン・ケース先生(Calvin S. Case) が「一部の患者さんの治療には、歯を抜いた方が良いのでは」と学術的に反論し、1911年(明治44年)に「アングル・ケースの抜歯・非抜歯論争」が巻き起こりました。
診断の重要性
矯正治療の診断は、単に「歯を抜くか、抜かないか」を決めるためだけのものではありません。
人が生きる上で、歯は無くてはならないものです。
生涯自分の歯で食べられるためには、どのような位置に歯があるべきかを診断しているのです。
私がこの考えに至ったのは、大学卒業3年目にアリゾナ州ツーソンで受講したツイード先生の講習会がきっかけでした。
講習会は2週間あり、なか休みの日に、当時テニスにはまっていた私は講習会会場の近くのテニスコートへ行きました。
そこでテニスをしているおじいちゃんと友達になり、色々話をしているうちに、そのおじいちゃんはツイード先生に治療してもらったという事がわかりました。
歯並びがきれいなのは当たり前、驚いたのは80才近いのに矯正治療によって抜歯した歯以外は一本も抜けていない事でした。
それまで形式的に診断をしていた私は、この時を境に、「診断の重要性」を認識しました。
非抜歯治療のリスクと診断の役割
もし非抜歯治療になんのリスクもなければ、世界の全ての矯正医は非抜歯治療をおこなっています。
非抜歯治療なら分析・診断はさほど重要ではありません。
診断は生涯を通じて機能し続ける歯並びを得るためのものです。
矯正治療が成功するかどうかは診断にかかっています。
医師とよく相談して治療方針を決めてください。
初代院長大崎 喜弘