外科矯正(健康保険適用)

Surgical orthodontics

顎変形症の外科的矯正治療について

  • 外科的矯正治療とは、矯正治療と顎骨の手術を組み合わせて、患者さんの噛み合わせを改善する治療法です。この治療は、「顎変形症」という病気と診断された患者さんが対象です。 顎変形症とは、上顎骨もしくは下顎骨、またはその両方の大きさ、形状、位置の異常、あるいは上顎と下顎の位置関係の異常により、顎顔面形態や咬合に異常が生じ、審美的に不一致を呈するものと定義されています。上下の顎の骨にずれがあり、矯正治療だけでは咬合の改善が困難な場合に行われます。

  • 画像:顎変形症の外科的矯正治療について
  • 下あごが前に出てしゃくれている(下顎骨前突症)

    画像:下あごが前に出てしゃくれている
  • (下あごが小さくて後ろに下がっている(、上顎前突症)

    画像:下あごが小さくて後ろに下がっている
  • 顎が横にずれて、顔が曲がっている

    画像:顎が横にずれて、顔が曲がっている
  • 笑うと歯茎が見える

    画像:笑うと歯茎が見える
  • 上下の歯がかみ合わない、または歯と歯の間に隙間がある(開咬)、咀嚼が困難である、発音がしにくい

    画像:上下の歯がかみ合わない

外科的矯正治療とは

外科的矯正治療とは、歯を動かす矯正治療と顎の骨の手術を組み合わせた治療法です。矯正治療だけでは不十分な場合におこないます。
顎骨の手術は、骨の形態異常を治療し、機能的・審美的な調和を図るものです。

噛み合わせを優先して治療をおこないます

  • 噛み合わせを優先して動かしますので、顔貌の変化は、ご本人にとって望ましいものになるかどうかは誰にもわかりません。手術前に期待されていた変化が、術後の実際の顔貌と違うかもしれません。美容形成外科と外科的矯正治療は根本的に異なるので、「こんな風に顔を変えたい」というご要望にはお応えできない場合もあります。
    一方、外科的に骨の形を変えることで、顔の形が変わることは避けられません。上顎の骨を動かすと鼻から唇にかけての形(顔の中心からやや下のバランス)が変わり、下顎の骨を動かすと唇から下顎の先端にかけての形(顔の底のバランス)が変わってきます。
    矯正治療だけでは、上下の歯が合うように歯の傾きが大きくなりますが、外科的矯正治療では、顎の骨に対して歯の傾きをより安定する方向に並べます。歯槽骨(歯が埋まっている骨)はより良い向きで噛む力を受け止めることができるので、噛み合わせが安定し、歯と骨の両方に負担をかけません。

  • 画像:噛み合わせを優先して治療をおこないます

顎矯正手術について

当院では、(2022年現在)・公立学校共済組合 近畿中央病院 歯科口腔外科に手術を依頼しています。

手術は全身麻酔で行われ、動かした骨は体に害のない材料でできたネジやプレートで固定されます。顎の位置が安定するように上下の顎を固定する顎間固定術を行い、再び1週間程度(ただし、手術の方法によっては3週間程度まで固定する場合もあります)手術は終了します。基本的に手術はすべて口腔内で行うので、顔の外側に手術痕が長く残ることはありません。

顔にはさまざまな感覚器官が集中しているため、血流が豊富です。また、骨の中にも太い血管や神経が通っているので、削る位置や方向、量などにさまざまな制限や制約があります。そのため、誰もが自由に思い通りに顎の形を変えることができるわけではありません。

顎矯正手術を計画する上で最も重要なことは、患者さんに合った適切な方法(矯正治療と手術の組み合わせなど)を見つけることです。顎の見た目を改善するだけでなく、顎顔面領域の重要な機能を調和させ、良い結果を得るための治療法を患者さんと一緒に考えていきます。

顎矯正手術の種類
基本的には、歯と顎を調和させる手術です。上顎(上顎)に対する手術と下顎(下顎)に対する手術の2種類に分かれます。
上顎と下顎の両方に問題がある場合は、両方の手術を組み合わせておこないます。

外科的矯正治療の流れ

Flow

Step1. 初めての来院(約60分) 初診相談(無料)

患者様の口元、横顔、正面顔を診察させていただきます。その後、患者様と過去の治療が類似している症例を選択し、外科的矯正治療の概要をご説明します。

Step2. 精密検査(所要時間:約60分)

歯形、咬合形状、口の中の写真、顔の写真、レントゲン写真、下顎運動、咀嚼筋の検査をおこないます。

Step3. 診断・治療方針の説明(所要時間:約20~30分)

レントゲン写真などを用いて、治療方針の説明をおこないます。説明をご理解いただいた後、公立学校共済組合 近畿中央病院 歯科口腔外科に受診していただき、手術の説明を受けていただきます。顎変形症手術についてご理解いただけましたら、術前矯正治療に移ります。

Step4. 治療開始(所要時間:約5~60分)(1~2年)

マルチブラケット装置を用いて歯を移動させます。

Step5. 入院、顎矯正手術

顎の骨を移動させます。

Step6. 術後矯正、(6~12か月間)

基本的には、手術前に歯並びを整えているので、手術が終わった時点で上下の歯はしっかり咬めるようになっているはずです。しかし、微調整のため、歯をより安定させるためには、やはり手術後に術後矯正が必要です。術後矯正は退院後に当院を受診しえいただき術後矯正を開始となります。

Step7. 保定(ほてい)

移動させた歯を維持・安定させるための治療です。
マルチブラケット装置を取り外し、保定装置を装着します。

Step8. 治療後の資料取り(所要時間:約30分)

初診時の精密検査と同等の資料取りを1回の来院でおこないます。

Step9. チタンプレート除去手術

この治療で使用する金属製のネジやプレートは、人体に無害とされるチタンでできています。途中で折れたり緩んだりするなどの特別な異常がなければ、それらを取り除く再手術を受ける必要はありませんが、将来的にインプラントや入れ歯を入れる時期に何らかの問題が生じる可能性があります。また、ごくまれにアレルギー反応が出ることがあります。定期的な経過観察や歯科医師への相談が必要です。さらに、CTスキャンは、歯にかぶせた金属と同様、ハレーションを起こすことがあります。除去を希望される場合は、公立学校共済組合 近畿中央病院 歯科口腔外科で再度入院、手術をおこなっていただきます。

外科的矯正治療のメリットとデメリット

上下の顎骨の不調和が顕著な顎変形症を矯正治療のみで治療する場合、顎骨の不調和を歯の傾斜で代償的に治療するため、歯周組織への負担が大きくなり、安定したかみ合わせを得ることが難しくなります。

外科的矯正治療のメリットは、不正咬合の主な原因である顎の位置を骨切り手術によって改善することで、歯や歯周組織に負担をかけずに安定した噛み合わせと機能、調和のとれた顔貌を得ることができる点です。

一方、リスクとしては、骨切り手術による一時的な知覚異常の可能性や、入院による社会活動の制限などが挙げられます。

顎変形症のセルフチェック

顎変形症には、さまざまな症状があります。まず、以下のような異常がないか、自分でチェックしてみましょう。

  • 1)下あごが大きい、または出ている(下顎骨前突症)
  • 2)下あごが後ろに下がっている、または小さい(下顎後屈・下顎骨が小さい)
  • 3)上あごが後ろ向きで小さい(上顎前突症)
  • 4)前歯が噛み合わない(開咬)
  • 5)下あごがずれている(下顎非対称)
  • 6)前歯が大きく出ている(歯槽骨前突症)

このような症状は、噛めない、言葉が聞き取りにくいなど、さまざまな機能障害を引き起こします。「出っ歯」「受け口」「出っ歯」と呼ばれ、悩む人も少なくありません。

外科的矯正治療の治療費

当院は、顎変形症の矯正治療を行うための顎口腔機能診断施設(一定の施設基準が必要となっています)の指定を受けておりますので、治療には健康保険が適応されます。

健康保険適応時の治療費の目安

矯正治療(3割負担) 平均40〜60万円前後(平均45万円程度)

 治療にかかる費用は症例によってかなり異なります。矯正治療の内容および期間、手術の内容、入院日数によって変わってくると思います。

 外科的矯正治療は高額療養費に対する償還払い制度(高額療養費制度)の対象になりますので、1カ月間に支払われた医療費の自己負担額(差額ベッド代などは除く)が定められた限度額(標準報酬月額により変わる)を超えた場合に、患者様からの申請により、払い戻される場合があります。該当するかどうかのご確認や申請の手続きは、市町村の窓口等でお願いします。

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