歯を抜かない治療

Don't pull

歯を抜かない治療

無理な非抜歯治療
=歯を抜かない矯正について

無理な非抜歯治療=歯を抜かない矯正について

私たち全ての矯正専門医は、診断の上、可能であれば歯を抜かずにできる治療計画を立案します。しかし診断の結果やむを得ず、抜歯をして治療をした方がいい場合もあります。

そのようなケースで無理に歯を抜かないで治療を行うと、患者さんが多くのリスクを背負うことになります。

アメリカ矯正歯科学会の統計によると、欧米の人種では約70%、アジア系の人種では約65%が非抜歯で治療が可能と言われてます。

当院では、残りの35%の患者さんについては、歯を抜かないで治療するか、歯を抜いて治療するかは、患者さんにそのリスクについてよく説明し、相談の上治療方針を決めています。矯正治療は一生に一度の治療です。医師とよく相談をし、納得して治療を受けてください。

非抜歯矯正の治療方法

非抜歯矯正の治療方法

たとえば、このような不正咬合(八重歯)で考えてみましょう。 不正咬合(出っ歯・乱杭歯・八重歯等)を歯を抜かずに治療をする場合、歯列を拡げて治療します。

非抜歯治療(1)

非抜歯治療(1)

前方に拡げると、「整った歯並びの出っ歯」になってしまいます。

非抜歯治療(2)

非抜歯治療(2)

出っ歯にしないように、側方部を拡げたらどうでしょう。 この場合でも少し出っ歯になります。 また、このような歯並びは正常な歯列弓でないために、本来の歯の機能を全て回復することはできません。

抜歯をした場合

抜歯をした場合

抜歯をすると、歯を並べるスペースが生まれ、すべての歯が正しく配列しました。

無理な非抜歯の問題点

無理な非抜歯の問題点

歯周病の原因になる

歯列からはみ出した歯は、歯を取り巻く骨(歯槽骨・しそうこつ)が無いので歯茎が下がって歯周病になっています。これが歯槽膿漏の始まりです。

無理に歯列を拡大することで、歯列全体がこのような状態になりやすくなります。

歯の外側の骨(歯槽骨)が無くなり歯周病(歯槽膿漏)になっています

歯の外側の骨(歯槽骨)が無くなり歯周病(歯槽膿漏)になっています。

なぜ歯周病の原因になるのか

なぜ歯周病の原因になるのか なぜ歯周病の原因になるのか

歯は歯槽骨(しそうこつ)という骨に取り囲まれ、上の歯槽骨は上顎骨、下の歯槽骨は下顎骨とつながっています。 上顎骨、下顎骨、歯槽骨の外側の骨は固く、強い力が加わっても骨が折れにくくなっています。

左のレントゲンは歯を取り巻く歯槽骨の厚みを見ています。 この厚みは人によってさまざまですが、平均1mm 程度と言われています。 歯槽骨は退縮することがあっても、増加はしません。 歯はこの歯槽骨の中でしか移動(拡大・縮小)ができません。

歯槽骨の幅の比較

歯槽骨の幅の比較

不正咬合(八重歯)のケースで、歯槽骨の幅を表しています。 非抜歯治療では、歯列を拡大して治療します。

非抜歯治療(1)

非抜歯治療(1)

前歯が歯槽骨からはみ出し、前方部の歯槽骨が薄くなっています。 また、大変出っ歯にもなっています。

非抜歯治療(2)

非抜歯治療(2)

側方歯が歯槽骨からはみ出し、側方部の歯槽骨が薄くなっています。 また、少し出っ歯にもなっています。

抜歯をした場合

抜歯をした場合

歯槽骨内に歯が並んでおり、歯槽骨がしっかり歯の周りを取り囲んでいます。

歯が重なっている場合(乱ぐい歯)

歯が重なっている場合(乱ぐい歯)

歯の重なり(乱ぐい歯)が多い場合は、非抜歯治療では無理な拡大をしなければなりません。

非抜歯治療(1)や、非抜歯治療(2)のような歯並びをつくるには、前方や側方に歯並びを拡げます。 拡げ過ぎると、正常な歯並びを無視した並べ方になり、本来の機能がはたせません。 また、歯茎がやせて(退縮)、将来歯周病になりやすくなります。

無理な非抜歯矯正と「後戻り」

無理な非抜歯矯正と「後戻り」

誰しも、できるだけ多くの歯を残したいものですし、抜歯には心理的な負担もあると思います。 しかし無理な非抜歯治療には後戻りのリスクも増幅させます。

後戻りが起こりやすい

無理な非抜歯治療では、一時的に歯並びが整ったとしても、歯列が不安定なため後戻りしやすいです。 また戻る量も多くなる傾向があります。 年月を経ると、噛み合わせが崩れることも予想されます。

歯の移動が起こりやすくなる

無理な非抜歯治療をおこなうと、矯正治療後の後戻りだけでなく、歯ぎしりや食いしばりなどの影響で歯が動きやすくなります。 その結果、歯並びが大きく崩れる可能性が高まります。

長期的なリスク(10~20年後)

歯並びの崩れなら、再治療で改善できる場合もあります。しかし無理な非抜歯治療では、歯を取り巻く組織にも悪影響が出ます。 たとえば歯周病が進むと、歯茎や歯槽骨が退縮していきますが、現在の医学では、これらの退縮を元に戻すことはできません。

後戻りを防ぐ舌と頬のバランス

歯並びを安定させるためには、健康な歯茎、歯を取り巻く健康な骨(歯槽骨)、正しい舌、頬(ほお)の運動が必要です。

しかし歯列を拡大しすぎると、頬(ほお)の運動によって元の位置へ押し戻されます。 歯列を狭くすると、舌の運動によって外へ押し広げられます。

歯列は非常に機能的で、安定した位置になければなりません。 このルールを破ると、歯列は年月(10年単位)とともに不安定になり、「後戻り」が起こってきます。

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